「みわわったら、強子さんと何してるの? というか、臭すぎ。いったい何があったの?」
「二人とも、誤解しないでね。私は強子姉が汲み取り便所に嵌ったのを助けただけで」
必死に言い訳をした。
絶対に強子姉との仲を疑われたくない。
私まで変態扱いだ。まあ、強子姉が変態なのは私のみぞ知る、だけど。
私の今後の運命を決める言い訳を信じてくれたのか、二人は
「大変! 強子さんシャワー浴びてって。洋服も貸すよ」
「ありがとう珠理ちゃ~ん」
今にも抱きつきそうな勢いだ。だが、強子姉はハッと自分の姿を見て、すぐにやめた。
外では変態みたいなことはしないから安心して見ていられるけど、家の中だったら絶対に抱きつくな。
強子姉は、自分が臭くなっている状態を忘れているのだろうか。
珠理ちゃんはどこから洋服を二人分、出してきてくれた。
私たちは、トイレ内で待機。
動くと廊下や階段が汚物だらけになるから。
「これでいいかな?」
差し出したされたのは、ピンクと白のTシャツと黒と青のジャージだった。
「充分だよ、ありがとう」
強子姉もお礼を言う。強子姉は珠理ちゃんが持ってきてくれた着替えの中から迷いなくピンクと黒のジャージを選んだ。
珠理ちゃんと一緒に、私と強子姉はお風呂に案内してもらう。
廊下が汚物だらけになる。
「ごめん珠理ちゃん、あとで廊下私たちが責任もって綺麗にするから」
「わかった。それじゃあ、ここがお風呂場だよ。自由に使って」
階段を降りた裏に、お風呂場はあった。
強子姉がお風呂のドアを開けると五右衛門風呂が目に入ってきた。
私は薪をくべに外へ出た。臭さに、やる気が萎えた。
汚物だらけだからかハエが寄ってくる。ええい、鬱陶しい。強子姉並だ。
私は汚物だらけのまま、お風呂の前まで行った。
「みわわ~、お姉ちゃんのほうが臭いから先に入っていい?」
強子姉は歩く肥溜めと化していた。
いくら責任もって片付けると言っても、この汚物の臭いはなかなか取れてくれないか。
鼻が曲がるという諺があるが、鼻が曲がるどころか、鼻が捥げる。
私は強子姉に頷くと、お風呂のドアを閉めた。
「みわわー、ドアの外にいるー?」
「いるから、早く上がって」
息を送りながら火を熾す。なんて面倒くさい。
火は赤々と燃えている。
まったく、誰のせいで臭くなったのよと文句の一つも言ってやりたいが、事故だからしょうがないよね、としか言えない。
許すしかない。強子姉に悪気がないから。
「みわわ、今、風呂浴び終わったよ。今、体を拭いてるところ」
「実況中継は要らん。早くして」
強子姉の声がよく響く。なんの虫か知らないけど、もう鳴いていた。
「みわわったら、せっかちなんだからん」
「だから、いっつも言ってるでしょ、キモいって」
「ひどいーん」
他愛もない会話をしていると、強子姉がドアを開ける音がした。
お風呂のドアの前へ行くと、
「くっさ……。風呂に入る前に比べたら上等か」
「強子姉、少しは臭くなくなったね」
「ゴシゴシ磨いた」