「みわわのお姉ちゃん、ますます可愛くなったよね」

 珠理が当然のように言う。

「突然、何?」

 私はなにかあるのかと構えてしまった。

「でしょ~。みわわったら、私の魅力に気づかないのよ~」

 確かに下足箱のところで別れたはずなのに、強子姉が私の隣に立っている。

 クラスメイトも、もちろん興味津々でこちらを見ている。

 まあ、強子姉のクラスはちょうど私のクラスの上なので、階段を登らなければすぐに入って来られる。

 一学年の生徒が一桁だから、教室は広い。約七メートル×六メートルくらいはある。

 なぜ知ってるかって? 先生がこの間、測っていたから。

「もう強子姉、勝手に教室に入ってこないでよ」         

「いいじゃん別に。誰も困ってないし」

 強子姉は教室でもベタベタひっついてくる。

 珠理はこの光景に慣れているから気にしてない。

「私と強子姉のファンが困ってるの!」

 隠しカメラで写真を撮られてそう……。

 強子姉は全校新聞で素行が載る。

 ファンの中にもルールがあって、強子姉の妹・私に近づいて強子姉の情報を聞く行為はタブーとなっている。

「怒った顔も可愛い~」

 強子姉が笑いながら私のほっぺをつつく。

「みわわのほっぺ、やわらか~い。気持ちいーい。なんで、みわわは、こんなにぷにぷにしてるの? 抱き枕みたい」

「悪かったわね、太ってて」

 私が半眼で睨むと「きゃあ、怖い」と言いつつ、顔は楽しそうに笑っている。

「皮肉言ったわけじゃないのよ~」

 強子姉は他人目を引くので、いろんな学年の生徒が教室の周りにいた。

 いつものことだから、誰も気にしない。

 そういっても全校三十六人。私と強子姉と珠理を覗いたら三十三人。

 そのうち、強子姉ファンは、ざっと数えたら二十五人

 学校の生徒の半分以上が強子姉に興味を持っている状況になる。

 ……我が校のアイドルだな。

 ミス川田小学校・佐藤強子。

 女子も混ざっているところを見ると、女子の憧れでもあるようだ。

「で、なんて言った? さっき」

「みわわのお姉ちゃん可愛くなったねって言ったんだよ」

 可愛くなる……。昨日のUFOに行ったから?

 そこでメンテナンス……。

 自分でメンテナンスなんて言葉が出てきて、驚いた。

 想像は広がる。

 強子姉はお母さんまで洗脳してUFOが来た事実をうやむやにして、機械のようにメンテナンスをしたことを隠そうとしている……。

 ふと冷静になると、バカみたいな話だ。

 今は二十一世紀だぞ!?

 そんなバカバカしい話があるか?

「みわわ、なにか悩みでもあるの?」

 私を悩ませている当本人が涼しい顔で言う。

 きっと強子姉の存在が私を悩ませているとは、思っていないだろう。

「別に何も」私はつっけんどんに言った。

「だったら、そんな怖い顔しない」

 私の反応が強子姉のリアクションに反映されるので、私たちのやり取りを見ている生徒は多い。

 強子姉はなぜ自分が見られているのか気にしないから、不思議だ。

 いわゆる天然てやつ。

「ほら、これあげるから、元気を出して」

 私の席の机の上に強子姉が箱を載せた。

「なにこれ?」