また変な代物ではないだろうな。

 今まで生きてきてまともなプレゼントを貰ったのは、私が幼稚園に通っている時に肺炎になって入院したときにくれた手紙だけだ。

「開けてみて」

 包装紙を綺麗に剥がして、箱を出す。箱はダンボールでできていて、「こわれもの」と書いてあった。可愛いひよこの柄がプリントしてあった。

「時計?」

「誕生日プレゼント。今日、みわわの誕生日でしょ。この時計とっとけい」

「あ……」

 姉のくだらないギャグにかまけて忘れていた。

「ありがとう」

 姉は嬉しそうに、にんまりと笑った。

 この笑顔は罪だなあ、と思う。この笑顔で迫られたら男はイチコロだな。

 男でなくてよかった。

「どういたしまして」

 チャイムが鳴る。

「じゃあ、みわわ、またね~」

「もう来なくていいよ~」

 私がニコリとして手を振ると、強子姉は私の耳元で「いやん」と囁いて去っていった。慌てて他の見物人も去る。

 変態がはみ出てる。変態がはみ出てる。

 あとから考えると、時計は時計でも置時計なんだから、……要らないのですけど。

 でも、せっかく強子姉がくれたものだから、綺麗に包装紙でまた包み、カバンの中にそっと入れた。

   8

「眠い……」

 私は家に帰るなり、ソッコーでベッドに入った。

 親が奮発して買ってくれた柔らかいウォーター・ベッド。

 気持ちがいい。眠気を誘ってくる。

 昨日の騒ぎで学校にいる間、帰り道、今、かなり眠い。

 感覚でわかる。あーもう寝そうだな……。

 バキ!

 今度は何? 何の音? 眠いのに……。

 重い身を起こし、部屋のドアを開ける。

(二字下がりに)私の部屋は強子姉の部屋と違って壁はピンク色じゃない。白だ。ついでに、もっと言わせてもらう。私の部屋は強子姉の部屋みたいにぬいぐるみだらけじゃない。

 強子姉はお風呂のドアをごそっと取ってしまっていた。

 私は驚愕した。なんてバカ力。

「……勘弁してよ……」

「みわわ~」

 姉は泣き出しそうな表情で私を見ていた。

 いや、私に助けを求められても。

「お母さん、強子姉がお風呂のドア壊したー」

「なんだって?」

 そりゃ、驚くだろうさ。

 どんだけ力を持ってんだよ。

「あらあら、どうしましょう。会社に電話しなきゃね」

 怒れよ!

 思わずツッコミそうになった。

 我が母よ、そんなに甘やかして、姉は暴走しないのか?

 お風呂のお湯が流れていく音がする。

 排水口がまるで、おじいさんが痰を出すときのような、カーっていう音がした。

 すごい吸い込み方だった。

「強子姉ったら、風呂桶まで壊してる!」

 風呂桶の腺があるほうの真ん中辺り、小さいボールくらいの穴が空いていた。

「あら、バレちゃった。てへ」

「てへ、じゃねぇ! どうしてこう強子姉は力、強いの。普通、風呂桶は、簡単に割れないよ?」